入試分析/解答速報
2024年02月03日
看護医療系専門進学塾の桜芽会です。
桜芽会では、各大学の看護系学科について、入試問題の解答解説を載せていきます。
今回は、2024年度 杏林大学 保健学部 1月30日(生物)の解答解説を載せます。
杏林大学を志望している生徒は是非参考にしてください!
【講評】
例年通りの出題形式であった。健康福祉学科,看護学科,救急救命学科,リハビリテーション学科を志望する受験生は,知識が十分であれば解ける問題が多かったように思える。
DNAの実験や恒常性,生態系・個体群の基本的な知識を確認しておく必要がある。
Ⅰ標準:体細胞分裂・遺伝子とDNAに関する問題であった。遺伝子の実験の知識が必要である。
Ⅱ易:体液と内分泌に関する問題であった。しっかりと得点しておきたいレベルである。
Ⅲ-A 標準:窒素循環と個体群に関する問題であった。空所が多くやや解きにくい設問があるが,丁寧に取り組めば十分に得点できる。
Ⅲ-B 標準:窒素循環と遷移に関する問題であった。空所が多くやや解きにくいが,問われている知識は基本的なものが多かった。
【解答】
Ⅰ
A
問1 ④ 問2 ① 問3 ②
問4 エ:③ オ:⑤ カ:③ キ:④ ク:③ ケ:⑧ 問5 ①,③
B
問6 ④ 問7 ②,③ 問8 ② 問9 チ:② ツ:① テ:④
Ⅱ
問1 ④ 問2 ② 問3 ⑦ 問4 ① 問5 ② 問6 ⑦
問7 ① 問8 ①,③ 問9 ⑤ 問10 ⑤,⑥ 問11 ③,⑤
Ⅲ-A
A
問1 ア:④ イ:⑦ ウ:③ エ:⑨ 問2 オ:② カ: キ:⑧ ク:⑥
問3 ケ:⑥ コ:⑨ サ:⑦ 問4 ④ 問5 ②,⑤
B
問6 セ:① ソ:⑤ タ:② チ:③ 問7 ④ 問8 ①,②,③,④,⑤
問9 - 問10 ④
Ⅲ-B
A
問1 ア:④ イ:⑦ ウ:③ エ:⑨ 問2 オ:② カ: キ:⑧ ク:⑥
問3 ⑥,⑨,⑦ 問4 ③ 問5 ②,⑤
B
問6 セ:⑥ ソ:③ タ:⑤ チ:⑧ ツ:① テ:②
問7 ⑦ 問8 ①
C
問9 ニ:③ ヌ:⑦
【解説】
Ⅰ
A
問1 細胞分裂を行う際は,間期(S期)にDNAを複製し,娘細胞に分配する。
問2 体細胞分裂におけるDNA量の変化を図に示す。体細胞分裂直後の細胞(図中a)のDNA量=2とすると,同じくDNA量=2となるのはG1期終了直後の細胞(図中①)となる。
② S期終了直後の細胞(図中②)のDNA量は,体細胞分裂直後の細胞の2倍である。
③ G2期終了直後の細胞(図中③)のDNA量は,体細胞分裂直後の細胞の2倍である。
④ M期前期の細胞のDNA量(図中④)は,体細胞分裂直後の細胞の2倍である。
問3 DNAの遺伝情報が,mRNAに転写されてタンパク質が合成される過程は,遺伝子の発現という。
問4 すべての細胞には全遺伝情報が存在しており,特定の遺伝子を発現することで特有の形態や機能を持つようになる。これを分化という。
クリスタリン遺伝子は眼の水晶体で発現する遺伝子,ヘモグロビン遺伝子は赤血球(前駆細胞)で発現する遺伝子,インスリンはすい臓のランゲルハンス島B細胞で発現する遺伝子である。以上を踏まえて,すべての細胞にクリスタリン遺伝子・ヘモグロビン遺伝子・インスリン遺伝子が存在するが,各遺伝子の発現は前述のようになる。
問5 ヒトゲノムでは,遺伝子としてはたらく領域は約1.5%であり,遺伝子以外の領域がゲノム全体に占める割合が非常に高い。また,ヒトゲノム(約22,000個)は23本の染色体に分かれて存在している。
B
以下の実験内容とその結果は頭に入れておきたい。
・グリフィス…肺炎双球菌を用いた実験から形質転換を発見した。
・エイブリー…形質転換の原因物質=遺伝物質の本体であるとし,肺炎双球菌の抽出液を用いた実験から,遺伝情報を担う物質がDNAであることを明らかにした。
・ハーシーとチェイス…T2ファージ(バクテリオファージ)を用いた実験から,遺伝情報はタンパク質ではなくDNAが持つことを明らかにした。
問6 グリフィスは,加熱殺菌したS型菌と生きているR型菌を混合してネズミに注射すると肺炎を発症し,体内から生きているS型菌が検出されたことから,生きているR型菌がS型菌に変化したと考えた。このように,本来持っていない形質を持つようになることを形質転換という。
問7 S型菌抽出液には,DNA・タンパク質・糖・脂質など様々な物質が含まれている。
タンパク質分解酵素で処理した[抽出液a]にはDNAが,DNA分解酵素で処理した[抽出液b]にはタンパク質が含まれる。
問8 問7より,[抽出液a]にはタンパク質が,[抽出液b]にはDNAが含まれている。エイブリーが行った実験では形質転換の原因物質はDNAであることが明らかにされているため,DNAを含む[抽出液b]を含む培地で培養した場合にのみR型菌はS型菌に形質転換する。
問9 グリフィスは,S型菌が持つ物質(DNA)がR型菌に取り込まれて形質転換が起こることを発見した。エイブリーは,形質転換はDNAによるものであると明らかにした。ハーシーとチェイスは,T2ファージの遺伝子の本体はDNAであることを明らかにした。
Ⅱ
問1 赤血球の大きさは,約7~8 µmである。
問2 血小板の大きさは,約2~3 µmである。
問3 血液中の赤血球の数は,男女差はあるが約350万~500万個/mm3である。
また,血小板の数は20~30万個/mm3であることも覚えておきたい。
問4 血液中の二酸化炭素濃度は,延髄が感知し,自律神経系を介して呼吸や心臓の拍動の調節を行う。
問5 体温の変化は,間脳の視床下部が感知し,自律神経系やホルモンの働きによって調節される。
問6 ヒトの生理食塩水の塩分濃度は0.9%である。
問7 バソプレシンは,間脳の視床下部に存在する神経分泌細胞で合成され,脳下垂体後葉から分泌される。腎臓における水の再吸収を促進するはたらきや血圧を上昇するはたらきを持つ。
鉱質コルチコイドは,副腎皮質から分泌される。細尿管でのNa+の再吸収を促進するはたらきを持つ。
問8 バソプレシンは,腎臓の細尿管と集合管に作用して水の再吸収を促進することにより,体液の浸透圧を調節する。
問9 健康なヒトの血糖濃度は,0.1%(100mg/100mL)である。
問10 視床下部は血糖濃度調節の中枢である。また,すい臓のランゲルハンス島の細胞(A細胞とB細胞)は,自身で血糖濃度の変化を感知することができる。
問11 低血糖時は,すい臓のランゲルハンス島A細胞からグルカゴン,副腎髄質からアドレナリン,副腎皮質から糖質コルチコイドが分泌される。グルカゴンとアドレナリンはグリコーゲンの分解を促進することで血糖量を上昇させ,糖質コルチコイドはタンパク質をグルコースに変えることで血糖を上昇させる。
高血糖時は,すい臓のランゲルハンス島B細胞からインスリンが分泌される。インスリンはグリコーゲンの合成促進や,細胞へのグルコースの取り込み促進を行うことで血糖量を低下させる。
Ⅲ-A
A
問1・2・3・4・5
陸上植物はNH4+やNO3–を根から吸収してアミノ酸・タンパク質・核酸・クロロフィルなどの有機窒素化合物を合成する。これを窒素同化という。 ア と イ については,下線部bに適するように注意して用語を選択する必要がある。大気中のN2を取り込んでNH4+に変換することを窒素固定といい,窒素固定細菌が行う。
※ 窒素固定細菌→根粒菌・ネンジュモ・アゾトバクター・クロストリジウム
土壌中では,生物の遺骸や排出物の分解・窒素固定細菌のはたらきによってNH4+が生じると,硝化細菌(亜硝酸菌・硝酸菌)により酸化されてNH4+→NO2–→NO3–と形を変える。この一連の反応を硝化という。NH4+やNO3–は植物が根から吸収して窒素同化に利用し,一部のNO3–は脱窒素細菌のはたらきにより再びN2となって大気中に放出される。これを脱窒という。
B
問6・7・8
ある地域に生活する同種個体の集団を個体群といい,複数の生物種の個体群の集合を生物群集という。個体群を構成する個体数を「個体群の大きさ」といい,一定空間あたりの個体数を個体群密度という。
個体数の調査方法には,区画法と標識再補法があり以下のような特徴がある。
① 区画法…植物や移動能力の低い動物の個体数を調べる方法。
② 標識再補法…移動能力の高い動物の個体数を調べる方法。使用する標識は,「個体の行動に影響を与えない」「脱落しにくい」ものを使う。
問9
ア:正しい。個体群密度は,単位生息空間あたりの個体数であらわす。
イ:正しい。密度効果とは個体群密度の変化が個体や個体群に与える影響のことである。また,個体群における最大の個体数を環境収容力という。
ウ:誤り。トノサマバッタの孤独相とは個体群密度が低い環境で幼虫期を過ごした際の形態である。
エ:誤り。生存曲線は幼齢期~老齢期の生存個体数を経時的に測定したグラフである。
オ:誤り。ニッチ(生態的地位)とは生態系において,ある生物種が生態系に占める位置(役割)を指す。
問10
区画内に生息する総個体数をNとすると,
N:全標識個体数=2回目の捕獲数:2回目の捕獲個体のうちの標識個体数
で求めることができる。これを用いると,
N:18=36:12
となるため,N=56となる。
Ⅲ-B
A
問1・2・3・4・5
陸上植物はNH4+やNO3–を根から吸収してアミノ酸・タンパク質・核酸・クロロフィルなどの有機窒素化合物を合成する。これを窒素同化という。 ア と イ については,下線部bに適するように注意して用語を選択する必要がある。大気中のN2を取り込んでNH4+に変換することを窒素固定といい,窒素固定細菌が行う。
※ 窒素固定細菌→根粒菌・ネンジュモ・アゾトバクター・クロストリジウム
土壌中では,生物の遺骸や排出物の分解・窒素固定細菌のはたらきによってNH4+が生じると,硝化細菌(亜硝酸菌・硝酸菌)により酸化されてNH4+→NO2–→NO3–と形を変える。この一連の反応を硝化という。NH4+やNO3–は植物が根から吸収して窒素同化に利用し,一部のNO3–は脱窒素細菌のはたらきにより再びN2となって大気中に放出される。これを脱窒という。
B
問6
一次遷移は,溶岩が冷えて固まった土地のように,土壌が形成されていない状態(栄養や保水力が乏しい)から始まる遷移であり,「裸地→荒原→草原→低木林→陽樹林→混交林→陰樹林」の順に進行する。裸地ではまず,コケ植物や地衣類のように土壌が形成されていない環境でも生育可能な植物が生育する。このような植物を先駆植物という。
陽樹林では林床の照度が低下するため,陽樹(生育にたくさんの光が必要な植物)の低木は生育できず,陰樹(生育にたくさんの光を必要としない植物)の低木が生育するようになる。その後,陰樹林でも同様に林床の照度が低いため,陰樹のみが生育するようになり構成種が安定する。この状態を極相(クライマックス)という。
問7
・先駆植物…コケ植物・地衣類・ススキ・イタドリ・オオバヤシャブシなど
・陽樹…アカマツ・クロマツ・コナラ・シラカンバなど
・陰樹…コメツガ・アラカシ・スダジイ・シラビソなど
問8
陽生植物(陽樹)は日なたで生育する植物であり,光補償点・光飽和点がともに高く,呼吸速度と光合成速度が大きい。
陰生植物(陰樹)は日陰で生育する植物であり,光補償点・光飽和点がともに低く,呼吸速度と光合成速度が小さい。
C
問9
同化量=摂食量-不消化排出量であるため,
(ⅰ)一次消費者の同化量=64.9-2.1=62.8
(ⅰ)の同化量に対する(ⅱ)の同化量の割合=(13.8-0.8)÷(64.9-2.1)≒20.7%
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