入試分析/解答速報
2024年02月07日
看護医療系専門進学塾の桜芽会です。
桜芽会では、各大学の看護系学科について、入試問題の解答解説を載せていきます。
今回は、2024年度 共立女子大学 2月日程(生物)の解答解説を載せます。
共立女子大学を志望している生徒は是非参考にしてください!
【講評】
例年通りの出題形式であった。生物基礎・生物の範囲から満遍なく出題されている。計算問題もあり,差がつく問題が多数あった。
Ⅰ 標準:動物の環境応答に関する問題であった。基本的な計算問題は解答できる力が必要である。
Ⅱ 標準:DNAの実験とバイオテクノロジーに関する問題であった。遺伝子組換え実験で差が付きやすいだろう。
Ⅲ 標準:生体防御に関する問題であった。拒絶反応の実験については,情報をしっかりと整理して取り組む必要がある。
Ⅳ 標準:植物の環境応答に関する問題であった。植物ホルモンのはたらきについての教科書レベルの知識が多く,丁寧に取り組めば十分に得点できる。
【解答】
Ⅰ
問1 ア:K+ イ:Na+ ウ:能動輸送 エ:受動輸送 オ:Ca2+ カ:エキソサイトーシス
問2 a:ランビエ絞輪 b:跳躍伝導 問3 R2,R3,R4 問4 アセチルコリン
問5 1) 40 m/秒 2) 4ミリ秒 3) キ:35ミリ秒後 ク:1 4) (完全)強縮
Ⅱ
問1 ア:エイブリー イ:ハーシーとチェイス 問2 ①,②,⑤ 問3 沈殿
問4 ⑤,⑦ 問5 95℃→55℃→72℃ 問6 12回
問7 1) 遺伝子断片α:② プラスミドβ:③ 2) DNAリガーゼ 3) ④
Ⅲ
問1 ア:リゾチーム イ:弱酸性 ウ:繊毛 エ:死んだ
問2 ④ 問3 オ:TLR カ:MHC キ:TCR 問4 粗面小胞体,ゴルジ体
問5 1) B系統移植片:5日 C系統移植片:10日 2) マウスY:5日 マウスZ:10日
問6 関節リウマチ
Ⅳ
問1 ① 問2 ア:全体 イ:基部側 ウ:青色光 エ:フォトトロピン
問3 B, D, G 問4 オ:アミロプラスト カ:下側
問5 茎と根ではオーキシン感受性が異なり,成長に差が生じるから。(29字)
問3 ⑥,⑨,⑦ 問4 ③ 問5 ②,⑤
問6 キ:K+ ク:高く ケ:と反対 問7 I, J, K
【解説】
Ⅰ
問1 細胞内はK+濃度が高く,Na+濃度が低い。これは,細胞膜上のナトリウムポンプが細胞外に3分子のNa+を,細胞内に2分子のK+を能動輸送しており,さらにK+リークチャネルによりK+は細胞外へと流出することにより細胞外に対して細胞内の電位が負に保たれている。この電位差を静止電位という。閾値以上の刺激が加わると,まず電位依存性Na+チャネルが開き,細胞内へNa+が流入して電位が逆転する。この電位差を活動電位といい,電位が正に変化することを脱分極という。その後,電位依存性Na+チャネルが閉じ,電位依存性K+チャネルが開くとK+が細胞外へ流出することにより,再び細胞内の電位は負になる。これを再分極という。
興奮の伝達は,ニューロンの軸索末端に興奮が伝導すると,軸索末端のCa2+が開いてCa2+が流入し,それによりシナプス小胞が軸索末端の細胞膜と膜融合することで,神経伝達物質がエキソサイトーシスによりシナプス間隙に放出されることで起こる。
問2 (a) 有髄神経繊維の髄鞘で覆われていない部分をランビエ絞輪という。
(b) 髄鞘は電気を通さない絶縁体としての性質を持つため,有髄神経繊維ではランビエ絞輪とランビエ絞輪の間をとびとびに伝導する。これを跳躍伝導という。
問3 伝導は1つのニューロンの上を両方向に,伝達は軸索末端から細胞体側の一方向のみに伝わる。そのため,Sに十分な刺激を加えた場合,R2,R3,R4で活動電位が記録される。
問4 神経筋接合部は,運動ニューロンと骨格筋におけるシナプスを指す。そのため,運動ニューロンから放出される神経伝達物質であるアセチルコリンが解答となる。
問5
1) 伝導速度は,軸索上の2点間の移動速度を考える。
10cm離れたB点を刺激すると35ミリ秒後に,12cm離れたC点を刺激すると40ミリ秒後に筋収縮が起こることから,2cm離れたB-C間を5ミリ秒で伝導することが分かるため,以下の式が立てられる。
(12-10)㎝/(40-35)ミリ秒=0.4㎝/ミリ秒=40m/秒
2) 刺激をしてから筋収縮が起こるのに要する時間は,以下の関係式が立てられる。
刺激から収縮に要する時間=伝導に要する時間+伝達に要する時間+収縮に要する時間
筋肉を直接刺激すると6ミリ秒後に収縮することから収縮に要する時間は6ミリ秒,伝達に要する時間をxミリ秒とし,B点を刺激した場合を考えると,
35ミリ秒=10(㎝)/0.4(㎝/ミリ秒)+x+6(ミリ秒)となる。
これを解いて,x=4ミリ秒
3) B点とC点を同時に刺激すると,筋肉には先にB点からの興奮が伝わり,その5ミリ秒後にC点からの興奮が伝わると分かる。しかし,筋収縮には6ミリ秒を要することから,B点からの興奮が伝わった5ミリ秒後は不応期であり刺激に反応できない状態にあると考えられるため,C点から伝わった興奮により筋収縮は起こらないと考えられる。
4) 1秒間に35回の刺激を加えることは,約0.03秒(30ミリ秒)に1回の間隔で刺激を加えることになる。このときにみられる収縮は完全強縮である。
Ⅱ
問1 (ア) 形質転換の原因物質を明らかにしたのはエイブリーである。
(イ) DNAがバクテリオファージの遺伝子であることを明らかにしたのはハーシーとチェイスである。
問2 エイブリーは,肺炎双球菌のS型菌のDNAがR型菌をS型菌へと形質転換させることを明らかにした。このことから,S型菌のDNAを含む抽出液を選べばよい。
問3 ハーシーとチェイスの実験では,大腸菌にファージを感染させた後,攪拌と遠心分離を行う。
攪拌は大腸菌に付着しているファージを引き離すために,遠心分離は重さの違いにより大腸菌とファージを分離するために行う。これによって,大腸菌は沈殿に,ファージの殻は上澄みに分離される。ファージは大腸菌の菌体内にDNAを注入して増殖するため,沈殿に標識がみられると分かる。
問4 プライマーを設計する際は,与えられたヌクレオチド鎖の塩基配列と相補鎖の塩基配列を考える。また,新生鎖は5’→3’方向に伸長するため,鋳型DNAに結合するプライマーは以下のように考えられる。
問5 PCR法は以下のステップを1サイクルとして行う。
① 95℃→2本鎖DNAの塩基間の水素結合を切断することで,1本鎖にする。
② 55℃→鋳型DNAにプライマーが結合する。
③ 72℃→DNAポリメラーゼがはたらき,新生鎖が伸長する。
問6 DNAを4000倍に増幅させるので,2n=4000となり,を求めればよい。
n=log24000=11.96=12
となるため,4000倍に増幅するのに必要なサイクル数は12回であると分かる。
<別解>
210=1024,211=2048, 212=4096 と順に考えていくことで,12回で約4000倍になると考えることもできる。
問7
1),3)
DNA断片α
→ 制限酵素aで切断すると,遺伝子Aが切断されるため不適である。制限酵素bで切断すると,遺伝子A全体を含むDNA断片を切り出すことができる。
プラスミドβ
→DNA断片αをプラスミドβに組み込む際,制限酵素cでも制限酵素dでも組み込むことは可能である。しかし,制限酵素dでプラスミドを切断してDNA断片を挿入すると,DNA断片が組み込まれなかったプラスミドとDNA断片を組み込んだプラスミドの選別が行えなくなる。そのため,抗生物質B耐性遺伝子の塩基配列中に遺伝子AのDNA断片を挿入することで,抗生物質B存在下で培養することでDNA断片の組み込みの有無を確認することができる。
2) 制限酵素で切断したDNA断片とプラスミドは,DNAリガーゼにより連結する。
Ⅲ
問1
(ア) 涙やだ液には,細菌の細胞壁を分解するリゾチームという酵素が含まれている。
(イ) 汗や皮脂は弱酸性で,微生物の繁殖を防いでいる。
(ウ) 気管の粘膜には繊毛があり,気管に付着した異物を体外へ排出する。
(エ) 皮膚表面には死細胞からなる角質層があり,細菌やウイルスの侵入を防いでいる。
問2
① 正しい。自然免疫ではたらく白血球(樹状細胞や好中球,マクロファージなど)は,病原体を非特異的に認識して排除する。
② 正しい。自然免疫が盛んに起こっている箇所では炎症が起こる。
③ 正しい。マクロファージは血管中では単球として存在し,血管外に出る際にマクロファージに分化する。
④ 誤り。NK細胞は食作用を行わず,感染細胞やがん細胞に対して直接攻撃して排除する。
⑤ 正しい。好中球は白血球の中でも最も数が多く,寿命も短い。
問3
(オ) 樹状細胞が異物を認識する際に関与する受容体はTLR(トル様受容体)である。
(カ) 樹状細胞が食作用により取り込んで分解した異物の断片(抗原断片)は,MHCに結合させて細胞膜表面に提示する。
(キ) 樹状細胞が細胞膜表面に提示している抗原断片-MHC複合体は,ヘルパーT細胞やキラーT細胞のTCR(T細胞受容体)で認識する。
問4 形質細胞は細胞内で合成した抗体を細胞外へ分泌する。分泌タンパク質は,粗面小胞体上のリボソームで翻訳した後,小胞体内で修飾され,さらにゴルジ体において修飾を受けることでエキソサイトーシスにより分泌される。
問5
1) B系統皮膚片を移植して2週間後のマウスXの体内には,B系統皮膚片に対する記憶細胞が形成されているため,再度B系統皮膚片を移植を移植すると10日よりも短い期間で脱落すると考えられる。一方で,C系統皮膚片に対する記憶細胞は形成されていないので,C系統皮膚片を移植すると,10日後に脱落すると考えられる。
2) マウスYに注射するマウスXのリンパ球には,B系統皮膚片に対する記憶細胞が含まれている。
マウスZに注射するマウスXの血清には,抗体が含まれている。
拒絶反応はキラーT細胞が主にはたらくため,リンパ球を注射したマウスYにB系統皮膚片を移植すると,記憶細胞により速やかに排除されるため,5日後に脱落すると考えられる。一方で,血清を注射したマウスZにB系統皮膚片を移植すると,血清中にはキラーT細胞の記憶細胞は含まれないため,10日後に脱落すると考えられる。
問6 自己免疫疾患は,関節リウマチ・1型糖尿病・重症筋無力症・バセドウ病はおさえておきたい。
Ⅳ
問1 傾性は,刺激の方向には関係なく刺激の強さの変化によって生じる運動である。
① チューリップの花弁の開閉は温度傾性である。
② 花粉管の伸長は化学屈性である。
③ 葉の落葉は,エチレンによる離層形成によって起こる。
④ つるの巻き付きは接触屈性である。
問2
(ア) オーキシンの取り込み輸送体(AUXタンパク質)は,細胞膜の全体に分布している。
(イ) オーキシンの排出輸送体(PINタンパク質)は,細胞膜の基部側にのみ分布している。
(ウ)・(エ) 光屈性は青色光を光受容体であるフォトトロピンが受容することで,光の反対側にオーキシンが輸送されることで起こる。
問3
A:不透明なキャップをかぶせているため,オーキシンは幼葉鞘の先端部全体で均一に分布するため,屈曲せずまっすぐ成長する。
B:透明なキャップをかぶせているため,青色光がフォトトロピンに受容されてオーキシンが光の反対側(左側)へ輸送されるため,左側の成長がより促進されて右方に屈曲する。
C:先端部を切除するとオーキシンは合成されないため,成長しない。
D:オーキシンは幼葉鞘の左側へ輸送された後に基部側へ移動するため,幼葉鞘の右側に雲母片を差し込んでも,幼葉鞘の左側の成長は起こるため右方に屈曲する。
E:オーキシンは幼葉鞘の左側へ輸送された後に基部側へ移動するため,幼葉鞘の左側に雲母片を差し込むと,オーキシンは基部側へ移動できず,幼葉鞘の左側の成長は起こらないため右方に屈曲しない。
F:雲母片を光の方向に対して垂直に差し込むと,オーキシンが幼葉鞘の左側へ輸送されないため,右方に屈曲しない。
G:雲母片を光の方向と同じ向きに差し込むと,オーキシンは幼葉鞘の左側へ輸送されるため,右方に屈曲する。
問4
(オ) 植物は,重力の方向をアミロプラストというデンプンを蓄えた細胞小器官で感知する。
なお,茎の細胞では内皮細胞に,根の細胞ではコルメラ細胞(平衡細胞)内に存在する。
(カ) アミロプラストが重力方向に沈降すると,その方向にオーキシンが輸送されるようになるため,茎と根ではともに下側でのオーキシン濃度が高くなる。
問5 茎と根ではオーキシンに対する感受性が異なる。茎では高濃度のオーキシンによって成長が促進されるが,根では高濃度のオーキシンによって成長が抑制される。そのため,植物体を水平に 置くと茎と根ではともに下側のオーキシン濃度が高くなるが,茎では下側の成長が促進されるため上方向に屈曲し,根では下側の成長が抑制されるため下方向に屈曲する。
問6 気孔の開閉のしくみは以下の通りである。
気孔を開く
① 孔辺細胞のフォトトロピンが青色光を受容する。
② H+-ATPase(H+ポンプ)が活性化され,H+が流出する。
→H+流出によって膜電位が変化する(過分極)
③ 膜電位変化により,電位依存性K+チャネルが開き,細胞内にK+が流入することで孔辺細胞内の浸透圧が上昇して吸水が起こる。
④ 吸水により孔辺細胞の体積が増大して膨圧が生じ,外側の薄い細胞壁が湾曲し気孔が開く。
気孔を閉じる
① 乾燥状態になるとアブシシン酸の合成が促進される。
② 小胞体からCa+が放出され,孔辺細胞内のCa2+濃度が上昇する。
③ Ca2+のはたらきにより,Cl–チャネルが活性化し,Cl–が排出される。
④ 膜電位変化により,電位依存性K+チャネルが開き,細胞外へK+が流出することで孔辺細胞内の浸透圧が低下して排水が起こる。
⑤ 膨圧が消失して気孔が閉じる。
問7 短日植物は,花芽形成に限界暗期より長い連続暗期を必要とするため,長日条件では花芽形成しない。また,この日長の長さは葉で感知しており,フロリゲンによって花芽形成は促進される。
H:葉が長日条件下にあるため,花芽形成しない。
I:葉が短日条件下にあるため,花芽形成する。
J:葉が短日条件下にあるため,花芽形成する。
K:Jで合成されたフロリゲンが師管を通って植物体を移動するため,花芽形成する。
L:葉が長日条件下にあり,かつMでは短日条件下に置かれた葉が存在しないためフロリゲンが合成されない。そのため花芽形成しない。
M:短日条件下に置かれた葉が存在しないためフロリゲンが合成されない。また,Lでは葉が長日条件下に置かれるためフロリゲンが合成されていない。そのため花芽形成しない。
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